金融機関で人工知能の導入が進む一方、同じ技術が詐欺側にも利用され、防御と攻撃の両面で高度化が進んでいる。信用情報大手エクスペリアンがまとめた二〇二六年版の不正予測では、この構図を金融業界における大きな逆説として位置付けた。米連邦取引委員会のデータでは、消費者の詐欺被害額は二〇二四年に百二十五億ドルを超え、企業側でも二〇二四年から二〇二五年にかけて不正損失が増えたとする回答が約六割に達した。被害拡大を受け、金融機関はAIを防御手段として重視しているが、犯罪側も同じくAIを使って攻撃速度と規模を高めている。
特に注目されるのが、自律的に判断して取引を進めるエージェント型AIの普及だ。利用者の代理として動くAIと、詐欺目的で動く自動化ボットの見分けが難しくなりつつあり、不正取引が発生した際の責任の所在もあいまいになりやすい。機械同士が直接やり取りする環境では、人間の確認を挟まずに大量の取引や申請が処理されるため、従来型の監視手法では追いつきにくい。業界では今後、取引責任や統制のあり方を巡る議論が本格化する可能性がある。
報告書はこのほか、生成AIを使った複数の新たな脅威も挙げた。採用面では、偽造された履歴書やリアルタイムの映像改変によって、本人になりすました応募者が遠隔面接を通過し、企業内部へ侵入するリスクが高まる。顧客接点では、本物そっくりの偽サイトを大量に作成する手口が容易になり、削除しても再出現を繰り返す状況が想定される。さらに、感情に寄り添うように会話する詐欺ボットが恋愛詐欺や身内を装う詐欺を高度化させ、スマートホーム機器を通じた個人情報の取得や生活行動の把握も新たな侵入口になるとみられている。
金融機関側はAIを重要投資分野とみており、意思決定層の八割超が今後二年の経営戦略で重要だと回答した。ただし、規制対応や説明責任への懸念も強く、七割超が制度環境を不安視し、六五%はAIに適したデータ整備を大きな課題に挙げた。金融分野では審査、不正検知、規制報告のいずれも説明可能性と監査性が欠かせず、AIの実用化はモデル性能だけでなく、データ品質と統治体制の整備が前提になりそうだ。
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